第二章

「お待たせいたしました。まずはルカニアの実のジュースで御座います」
ケイタはコップを三つテーブルに置いて、ジュースを一つ一つのコップに注いでいった。
「ルカニアの実? ふうん、聞いたことの無い果実ね……。ねえ、店員さん。どういう味がするのかしら?」
「酸味が強いですが、その後に甘味が来ます。とても爽やかな味ですよ」
飲んだことも無いのに、よく流暢に味の感想が出るものだ――ケイタは我ながらそう思った。
ケイタはルカニアジュースを注いだコップをそれぞれの前に置いていく。
そして頭を下げて、残り半分を切ったルカニアジュースが入った瓶を持ってカウンターへと戻っていった。
カランコロン、と入り口に付けられた鈴が鳴ったのはそのときだ。
それからは早かった。
例えば、幽霊のようにふわふわと浮き足立っている和服姿の女性(自らを座敷童と名乗っていた)とその付き添いである青年。
例えば、学生服に身を包んだ学生二人。ただし話している内容がロボット工学に関する内容で、とてもニッチなものではあるけれど。
例えば、黒のパーカーに身を包んだ学生と、その学生にべったりとくっついている少女。
例えば、ここに入ってくるなり『伝承を調べているのだが』と言ってきた不審な男女。
例えば、明らかにコスプレをしているような背中に翼を生やした少女と、その少女とああだこうだ話をしている少年。
普段はこれほどの人間が別々の世界からやってくることが無かった。とどのつまり、ボルケイノにとってこの状態が異質だと言えるだろう。
「……メリューさん、今日は凄いいっぱい人が来ていますね」
「それはそうだが……何というか、異質な雰囲気だとは思わないか?」
「メリューさんがそれを言いますか。確かに、そう思いますけれど」
普段も変わったお客さんがやってくることで(店員の間では)有名なボルケイノだが、今日はあまりにもおかしい。何というか異質というレベルを超えてしまっていて、その一言で片付けてしまって良いのかどうか気になってしまう程だった。
「まあ、私たちは料理をつくればいいのさ。その人たちが一番喜ぶ料理をね」
そう行ってメリューはずっと作っていた料理をケイタに見せた。
それは鍋料理だった。赤い液体が鍋を満たしており、そこに豆腐や野菜に肉といった様々な具材が浮かんでいる。
「……とても辛そうですね。匂いからして」
「辛さは食欲を増す、とも言われているからね。これくらい、別に食べられるでしょ」
確かに食べられないことは無いと思うが、それにしても独特な香りだ。
後にケイタはそう語っている。
「さて、ケイタ。これを持って行ってもらえるかな。テーブルに直接置くと焦げてしまうから、敷物を敷いてから置くんだぞ。まあ、それくらい十分理解していると思うが」
そうして、ケイタはメリューの指示通り鍋を各テーブルへ持って行くのだった。

◇◇◇

ケイタだけだと時間がかかるため、運搬はシュテンとウラという二人のメイドにも手伝ってもらった。シュテンとウラは鬼の娘だ。恥ずかしがり屋なところがあるのか、あまり人が多いところには行きたがらない。接客業としてそれは致命的なことではあるが、それはメリューはあまり気にしていないようだ。
「ありがとうございます、店員さん」
メアリーはテーブルに鍋を置いたケイタを見てそう言った。
それに遅れて残りの二人も頭を下げる。
それを聞いてケイタは笑顔を浮かべて、ありがとうございます、と頭を下げた。
一通り料理を置いて、
「ごゆっくりどうぞ」
と口にしてケイタはそのままカウンターへと戻っていった。