第十六話中編

 

レガドールの中心にある聖山ライトス山。

この山の麓にあるのがレガドールの王城、ライトス城だった。

巨大な城壁と、城の背後に聳えるライトス山。守りだけ見れば完璧と言えるだろう。

城門を潜り抜け、中に入っていく。中はスノーフォグと同じように城下町が形成されていない様子となっていた。城門の中に城下町が形成されているのはどうやらハイダルクだけのようだった。

そもそもの話。

ライトス城の周りには町が無い。キキョウが言うには城下町はラムガスとなっているらしい。城下町とするにはその距離が遠いように見えるかもしれないが、ライトス山の周りはとても人が住む気候とはなっていないようで、城下町が出来るほど豊かな土地では無かったのだという。

竜馬車を降り、城内に入る。竜馬車を興味津々に学者なり兵士なり見つめていたが、

「それは客人の大事なものです。決して疚しい思いを抱かないように」

キキョウのその言葉で見るのを辞めた。

どうやらこの城での彼女の立場は相当高いものにあるらしい。確かに、国王直属のシノビとなっているのだから、地位としてはそれなりに高いのかもしれないが。

城内はキキョウが先頭になって進んでいた。それについては理由を訊ねるまでもなく、彼女がこの城の人間だからであり、それは当然のことだった。

「ここが、国王の部屋となります。……正確には謁見の間、になりますね。国王の部屋はまた別の部屋となりますから。しかしながら、基本ここに居る兵士や学者が国王と謁見する場所はこことなっておりますから……いつしかそう呼ばれるようになりました。通称みたいなものですね」

扉がある場所で立ち止まり、キキョウはそう言った。

扉には紋章のようなレリーフが描かれていた。そのレリーフは本をモチーフとしたようなものだった。

「本……魔導書?」

「では、扉を開けます。どうか、粗相のないようによろしくお願いします」

僕の言葉がキキョウの耳に届くことは無かったようだった。

キキョウはその扉を開けていく。

そして僕たちは国王の部屋――正確には謁見の間へと入っていくのだった。

 

◇◇◇

 

「よくここまでやってきた。……まあ、正確に言えばキキョウがここまで連れてきたのだから、ということになるか。キキョウよ、よく予言の勇者ご一行をここまで連れてくることが出来た」

レガドールの国王は、ハイダルクの国王と雰囲気が似ていた。とはいえ、古くは国王の一族は一人の男の子孫になっているらしいので、ハイダルクの国王とレガドールの国王は遠い親戚ということになる。

「さて、君たちが次に何をすべきなのか、教えて進ぜようじゃないか。聞いた話によれば、バルト・イルファという魔術師によって船が燃やされてしまった、と。ならば船を造らねばなるまい。とはいえ、この国で作る船は、ただの船じゃつまらないだろう?」

ニヤリ、と国王は笑みを浮かべた。

「国王陛下。……その、何をお考えになられているのでしょうか?」

「考えている。考えているとも。私は常にいつも考えている。……ええと、確か、そうだったな。ルズナは居るか?」

「ルズナ。……あの古文書ばかり読んでいる学者ですか? 彼が一体……」

「いいから呼んできなさい。彼の研究を使えば、きっと度肝を抜くはずですよ。あの神様気取りの馬鹿女の、ね」

「了解いたしました。……それと国王陛下、いくらこのような場所だとはいえ、言葉を慎んだほうがよろしいかと。どれほどあの女の手下が紛れているかどうか、未だはっきりとしていないところもございますので」

そう言って、キキョウは謁見の間を後にした。

 

 

キキョウがルズナと呼ばれる学者を連れてくるまで、五分ほどの時間を要した。キキョウに連れられてきたのは古く分厚い書物を読んでいた男性であり、連れてこられたというよりもその見た目からすると――『引っ張られてきた』という側面のほうが強いだろう。

「どうしたんですか、キキョウさん。急にこのような場所に連れてきて……。ややっ、ここは謁見の間ではありませんか。国王陛下への報告の日は未だのはずでしたが……。何かありましたか?」

眼鏡の位置を直しつつ、ルズナは言った。

なんというか、強烈なキャラだなあ……。

「ルズナよ。お前、過去に古文書にてあるものを発見した、と言っていたな。確か『空飛ぶ船』とか言っていたか……」

「……ええ、確かに言いましたが」

「それを作ることは、理論的にも可能だと、言っていたな。そして準備も進めている……と」

「ええ、まあ、確かに……言いましたが?」

「足りないものは何がある? ライトス銀か? 浮力を作る空気よりも軽い素材とやらか? それともそれ以外のものか?」

「いえ、そう言われましても……。ああ、確か、ライトス銀だったかと思います。ライトス銀なら、ライトス山から採掘すればいいのですが、最近、ライトス銀があの山から採掘されにくくなってきたのですよね」

「採掘出来にくくなった? ……ああ、そういえばそのような報告があったような気がしたな。なぜ採掘出来ないのだったかな?」

ルズナは眼鏡を直すような仕草を一つ。

「ええ、ええ。確か、採掘の最中にどうしても破壊できないような石が見つかりまして……。ああ、でも大きさ的には石じゃなくて岩になるのかな。とにかく、それを破壊しないと、もうこれ以上採掘することが出来ないのです。四方八方坑道は伸びているのですが、そこからは横にも奥にも進めることが出来ないのです」

「ふむ……。そうだったな。しかし、ライトス銀が無ければその空飛ぶ船も作ることが出来まい……」

国王陛下は何か考えるような仕草を始める。

つまるところ、これ以上は手詰まり。

やる方法としては、明確に一つ決まっているというのだけれど、それをこちらに提示することが出来ないということだろう。

「あの、僕たちが向かうことは出来ないですか?」

「……というと?」

「僕たちがライトス銀を取りに行くことは、可能でしょうか?」

国王陛下が言いたくて言えなかったことを、こちらから提案する。

それを聞いて目を丸くするのは国王陛下とキキョウだった。

……当然だろう。あちらから言い淀んでいたことを、敢えてこちらから提示したのだから。

「それは不可能では無い……だろう。だが、そんなことを頼んでしまっていいのかね? 別に、ほかの人に任せてしまっても問題ない。君たちに危険を冒してまで、ライトス銀をとってもらう必要は無い。それに、ライトス銀が取れない可能性だってあるわけだからな」

「いや、けれど待っている時間もありませんから」

その言葉にメアリーたちも頷いていた。

どうやら、僕たちの考えは一緒だった。

それを見た国王陛下は頷いた。

その頷きは、ライトス銀を採取してきて良いという同意の頷きだった。

 

 

ライトス城、武具開発室。

その場所には、一人の男が紙に線を描いていた。それは直線だけではない。曲線も、円も、様々な道具を使ってはいるものの全て一人で描いていた。

それを見ていた僕は、一瞬でその集中力を削いではいけないと察し、何も言わずにただ踵を返した。

ただ、それだけだった。

「……別に俺に何か用があるのならば、言えばいい。どうせいつ完成するかも解らない夢物語な代物の設計図なんだからよお……」

背後から声が聞こえた。

低く、渋い声だった。

その声を聞いて、ゆっくりとまた元の位置に向き直した。

先程僕たちに背中を見せていたはずの男が、しっかりと僕たちを見つめていた。

長い顎髭、仏頂面、ぼさぼさの白髪。作務衣のような恰好に身を包んでいた彼は、その見た目から職人たるものだった。

「……それにしても、こんなガキどもが何の用だ? 俺は今忙しいんだよ、あのクソガキが言ってきた、空飛ぶ船とやらの開発でよ」

「え……。空飛ぶ船は、資材がなかったはずじゃ……?」

それを聞いた老人は首を傾げると、その発言をしたメアリーを睨みつける。

「おう、そうだ。……だが、なぜそれを知っている? それを知っているのはあのルズナって言うクソガキと、国王陛下だけだったはずだが……」

あの科学者、そんな呼ばれ方されているのか。

ちょいと可哀想な気がするけれど、そんなことを思っていては話がまったく進まない。だから、僕は話を続けた。

「知っている理由については、今は省かせてください。まあ、別に省く必要も無い程度の話ではありますが」

「ふん。どうせあいつが何か言いだしたのだろう? あるいは国王陛下がか……。まさか、お前たち実はそれなりに偉いとか、そういうことになるのか?」

「彼らは予言の勇者様ですよ、タンダさん」

そう言って僕たちの隣に姿を見せたのは、ルズナだった。

「……ルズナか。いったい何の用だ。ここに来た、ということは漸く見つかったか? あの岩盤をぶち壊すやり方が」

それを聞いたルズナは首を横に振り、

「いえ、残念なことではありますが、まだはっきりとしていません。寧ろ、それ以上の方法が見つかった、ということですよ」

「……まさか、予言の勇者に頼む、なんてことは言わないだろうなあ? 博識のお前が、他人を頼らないはずのお前が」

「……そんなことは言われたくありませんよ。それに、それは、昔のことでしょう。違いますか?」

「昔のことだから罪に問われないと思ったら大間違いだぞ、ルズナ。お前が何をしたのか知っている。お前がやったこと全て、たとえ国王陛下が容認されたとしても、その功績が認められ、国での一切の懲罰を受けないとしても!」

「やめなさい!」

ルズナが、聞いたこと無いような大きな声を上げた。

はじめ、彼自身は自分がなにをしているのか一切解らなかった。

だが、少し遅れてルズナは踵を返すと、大急ぎで来た方向に走って行った。

それを見たタンダは溜息を吐いて、

「……悪いな。変なところを見せてしまったな。お詫びと言ってはなんだが、何か飲んでいくか?」

その言葉を聞いて、僕たちは小さく頷いた。

 

◇◇◇

 

タンダの居た部屋の奥には畳が敷かれていた。簡単に言えば和室そのものがあったわけだが、それについて訊ねようとしたところで、タンダから話が始まった。

「……それにしても、空飛ぶ船なんて、本当に出来るんでしょうか?」

メアリーが単刀直入にタンダに訊ねた。質問したい気持ちは解るけれど、メアリー、直球過ぎやしないか。

……なんてことを思っていたのだけれど、肝心のタンダはなにも言わなかった。それについてはちょっとホッとしたところだったけれど。

「……まあ、お嬢ちゃんがそう思うのも仕方ない話ではあるな。かつてこの国もスノーフォグと同じように科学力では負けることは無かった。あくまでも『過言では無い』レベルであって、実際にそうだったわけではないがな。スノーフォグには負けていたものの、それなりの科学力があったわけだ。あの組織が成立するまでは……」

「組織?」

「……魔法科学組織『シグナル』」

タンダはぽつりとそう呟いた。

「その名前を知らない人間は、もはや殆どとなってしまったことだろう。それについては致し方無いことだとは思う。だが、そのシグナルという組織は、この国から科学者を根刮ぎ奪っていった。その先には何も残りはしなかった。それについて、勿論批判はしたがね。誰も聞く耳など持たなかったよ。そりゃそうだ、その時は、その組織は『世界の科学技術を一段階以上シフトさせる』という大義名分があった。それに逆らうことは間違っている、と違を唱える人間が殆どだったわけだからな」

シグナルの思想。

それは普通に考えると、世界のためを思っているものだと言えるだろう。マクロな視点から考えればその通りだと言える。

では、ミクロな視点にフォーカスを当ててみるとどうなるだろうか? 世界全体の科学技術を上げるため、とはいえそれが一極集中になることは好ましくないはずだ。特に、科学者を奪われてしまった国ならば、それは猶更だろう。

「……きっと、あんたはそれを理解して、聞いているのだろう。まあ、それはどうだっていい。もう過ぎてしまった話だ。もう終わってしまった話だ。それを理解して聞いてもらいたい。それがどうなろうと、俺にはもう関係のない……いや、それは言い訳だな。話を続けることにしようか」

タンダはそう言ってコップに入っていた水を飲みほした。

「……シグナルは最初こそ、どんな研究をしているか解らなかった。それはハイダルクにもレガドールにも知られなかったと言われている。まさにブラックボックスだ。そしてそれを知りたくても、こちらから手紙を寄せても、機密事項に係ると言われて何も出来なかった。だから我が国のシノビをスノーフォグに潜入させて、シグナルが研究していると思われる施設に入った」

「そこでは……いったいどのような研究が?」

タンダは頷いて、そうして、ゆっくりと話した。

「……人間を用いた研究、ということしか解らなかった。だが、人間の骨があまりにも多すぎた。人が死んだだけではあれだけの骨は出ない。きっと何らかのことが行われているはずだ……と。そしてそれは非人道的実験の賜物ではないか、という結論が出た」

「非人道的実験……」

こくり、とタンダは頷く。

「そうして、結局……はっきり言って結局のところ、それ以上の情報を得ることは出来なかった。しかしながら調査団の結果を鑑みたハイダルクとレガドールは戦争を仕掛けた。正確には仕掛けようとした、が正しいのかもしれないがな」

「何が、あったんですか」

メアリーの問いに、タンダは小さく頷いた。

そして目の前にあった水を飲もうとして――しかし、それはもう空になっているからただ飲もうとした仕草だけだったけれど――彼の話は続く。

「……お前たちも教科書や授業で知っているだろう。『弾丸の雨』……だ」

どういうことだ。

弾丸の雨はリュージュが予言した、世界の災厄。その一つじゃなかったのか?

「弾丸の雨について疑問を浮かべることもあるだろう。そして、それは当然だ。この世界の隠されるべき真実、その一つ。弾丸の雨の始まりは、こういうことだった」

「……明かされていない事実を、未来明るい子供たちに伝えて、何が面白いのですか」

気が付けば背後にルズナが立っていた。

ルズナを見つけてばつの悪そうな表情を浮かべるタンダ。

「未来明るいかどうかは、彼らが自ら切り開いていくものだ。果報は寝て待てとはよく言う話ではあるが、実際には待った者に良い未来が訪れるわけではない。努力を重ね、やるべき行為をすべて行った人間にこそ与えられる言葉なのだから」

「……そうかもしれませんね。確かに、それに、私が言える立場では無いと思いますが……」

ルズナはそう言いながらも、僕たちに近づいていく。

いったい彼は何がしたいのだろうか。それについて質問しようかと思っていたのだが、

「……結局、ルズナ。お前はいったいどうしてここに来た。お前が来る用事は無かったはずだろう?」

「あなたにはありませんよ、タンダさん」

ルズナはかけていた眼鏡の位置をずらして頷く。

「むしろ、私は君たちに話があるのですから」

「……僕たち、に?」

ルズナは頷いて、一枚の手紙を差し出した。

「国王陛下からの伝言です。それは、鉱山の地図である、と。そして鉱山の奥地に、先程言った『何故か固くて掘り進めることの出来ない』場所があります。そこに向かって何があるかは解りませんが……」

「やっぱり国王陛下は、あの奥に進んでライトス銀を手に入れようとしているのか」

憤慨した様子でタンダは言った。

「どうでしょうね。いずれにせよ、ライトス銀は様々なものに使われています。その一例が聖職者の生活用品です。あの場所はガラムド様が直々に名付けた聖山であることはあなたもご存じでしょう?」

ライトス山。

確か教科書の知識が正しいものであると仮定するならば、その由来はガラムドが実際にこの世界に居た時代まで遡ることになる。その頃はまだ名前が明確に付けられる前の話だったという。ガラムドがこの山に名前を付けた時、『聖なる光』という意味となったライトスという言葉をつけて、ライトス山と名付けた。その後、ライトス山には銀が豊富にとれるようになったため、ライトス銀と名付けられ、そのライトス銀は聖なる山からとれた金属として、聖職者が使う物品に主に使用されているのだという。……どれくらい使用しているのか解らないが、枯渇しないのだろうか?

まあ、恐らく枯渇しないか、それを考えていないかのいずれかなのだろうけれど。

「……ライトス銀は、そりゃあ、貴重なものであることは知っているよ。だが、別に採掘しないともう不味くなるほど余っていないわけではないのだろう?」

「それがですね、予言の勇者様に作る『空飛ぶ船』。これを実用化したいと言ってきたのですよ、真教会が」

真教会。

ガラムドのことを唯一神と信じ、神の一族たる祈祷師を準神という地位に置きながらも、神に等しい地位には置いていない。この世界の宗教としては珍しい立ち位置に立っていると言っても過言ではない。まあ、世の中にはガラムドを信じていない宗教も居るくらいなので、この宗教は未だ異端には入らないのだろうけれど。

「……真教会、か。あいつら、自分たちが唯一の正義と謳っているから言いたい放題だな。まあ、それを国の宗教としている以上、逆らうことはなかなかに難しいことなのだろうが。それにしても、烏滸がましい話とは思わないのか? 確か真教会の言い分だと、ガラムドは天界に居るはずだ。そのガラムドと同じ地位に立ちかねないものを進んで開発させるとは、はっきり言って信じ難いが」

「それは私に言われても困りますね」

ルズナは眼鏡の位置をずらすと、不敵な笑みを浮かべて、靴を脱ぎ、畳の上に入ってきた。

それを見たタンダは怪訝そうな表情を浮かべていたのだが、それを僕たちが居る場では言えないのだろう。というか、もう結構な回数僕たちの前で言っていることだし、別に隠す必要は無いと思うけれど。

それはそれとして。

タンダの言葉が無いことをいいことにルズナはずいずいと入ってきて、僕の隣に、正確には僕とメアリーの間にあった僅かなスペースに入り込んできた。

「ちょいと、失礼させてもらうよ。立ち話をするのも疲れるんだ。研究ばかりしているからだろ、と言われてしまうかもしれないがね……。まあ、実際にはそれ以外のこともしているわけだけれど」

「だからと言って、そこに入っていいと許可していないぞ」

「そうですか? ここにいる彼らはあまり気にしていないようですが。あなたの考え過ぎではありませんか。……とは言いたいところですが、私だっていろいろとひどい事をしてきましたからね。そう言われる気持ちも致し方ありません」

案外素直にルズナは謝罪した。

そうなってしまった彼を咎めることもできないタンダはいろいろと何か考えた挙句、頭を掻いて直ぐそばにあったコップを取り出し、水を注いだ。

「……、」

ルズナは何も言えず、ただ出された水を見てぽかんとしていた。

タンダは我慢できなくなったのか、お代わりした水を再度飲み干すと、

「なにぼうっとしてやがる。それはお前のために汲んだ水だ。それ以上の何物でもねえ。飲まねえ、って言うならすぐにまた俺が飲み干すぞ」

「いや、別に、そんなことは思っていませんよ。……いやあ、嬉しいなあ。ちょうど喉が渇いていたんですよ」

少しわざとらしいオーバーな反応をしてルズナはその水を一口飲む。

「……んで、話が進まないが、要はこいつらにライトス銀を採掘しにいかせる、ってことか?」

「正確にはライトス銀採掘の支障となっているものの調査、ですかね。ライトス銀は採掘するのにそれなりに高い技術を要します。それはこの国で長年培われてきた独特なものですから」

つまり、門外不出ということか。

それならば採掘させない理由も納得出来る。

「……さて、話がずれてしまいましたが、本題に戻りましょうか。国王陛下は言っていました。これはあくまでも『お願い』であると。だから断ることだって出来ます。そしてその場合はあなたたちに移動手段を持たせるための策を講じるとも言っておりました。ですから、これはあなたたち次第。あなたたちが出来ると言うのならば、ライトス山までご案内しましょう」

「そんなこと……」

はっきり言って、聞かれるまでも無かった。

そしてルーシーとメアリーもまた、同じ気持ちでいた。

だから、僕は、それについて大きく頷いた。

ライトス銀の採掘を阻害している謎の物体を除去する。ほんとうに自分たちに出来るかどうか解らないけれど。

それでも僕たちは、前に進むしか無かった。