第十五話前編

 

チャール島の港町、フィアノ。

しかしその町は活気に溢れているはずにも関わらず、人の声が一切聞こえることがなかった。人が生きている様子が見られない、とでも言えばいいだろうか。

「…………」

その時だった。

微かにどこかから声が聞こえてきた。その声がどのようなことを話しているかどうかまでははっきりとしなかったが、何かを話している、それについてははっきりと解った。

「なあ、ルーシー。今、何か聞こえなかったか?」

一応、ルーシーにも確認。もしかしたら空耳の可能性もある。

ルーシーは首を傾げて、

「何か聞こえたか? ……生憎、僕には何も聞こえなかったようだけれど」

やはり、聞こえなかったか。となると空耳の可能性が高い。無理にこれ以上追及する必要も無いだろう。

そう結論付けて、僕はルーシーになんでもないと言うところだったが――、

「こっちに来てください……!」

再び聞こえたその言葉は、どうやらルーシーにも聞こえたようで、目を丸くしていた。

ルーシーは僕のほうを見て口をぱくぱくさせながら、

「……もしかして、フル、君が言った『何か聞こえる』って、これのことかい?」

こくり、と僕は頷き、

「うん。でもさっきはこれくらいはっきりと聞こえなかった。どこか遠くで誰かが話しているな、って感じしか解らなかったよ」

「そうか。……いや、いずれにせよ、あの声はどこから聞こえてきたんだ? この声はいったいどこから……」

「もしかして、あの洞窟からじゃないのか?」

そう言ったのはレイナだった。レイナが指さしたその先には――山にぽっかりと開いた洞窟だった。

「あの洞窟からか……。ちょっと気になるが、見に行ってみるか」

洞窟の中は鍾乳洞になっていた。水音が響く、幻想的な空間となっていた。

こんなところに人が居るのか? なんて思っていたが――そんなことは早計だった。

椅子に一人の女性が腰かけていた。

薄緑のドレスに身を包んだ女性だった。けれど、それがほんとうに人間であるかどうかは判別し難い。はっきり言って、今の見た目を考慮すればそれは人間とは思えない。

彼女はほのかに光り輝いていたからだった。

『……ようこそ、いらっしゃいました。ルーシー・アドバリー』

椅子に腰かけていた女性はルーシーの名前を呼んで、そう言った。

「ルーシー、知り合い?」

「いや、初めて出会ったけれど……」

ルーシーの言葉を聞いて、女性は椅子から立ち上がる。

『守護霊について、あなたはどれくらいご存知でしょうか?』

守護霊。

名前だけは聞いたことがあるけれど、それほど知識は無い。

ただ人と契約を交わし、契約者を守るために行動をする。ただそれだけしか聞いたことがない。

『……その様子だとあまりご存知ではないようですね。まあ、仕方ないことでしょう。この世界はどれくらい進んでいるかは解りませんが、錬金術や魔術に比べれば非常にマイナーな分野ですから。マリアが私と契約を結んだときでさえ、まだ興隆の余地が残されている……としか解っていませんでしたから』

「マリア……、もしかして、マリア・アドバリーのことか!?」

『ええ。ルーシー・アドバリー、あなたにとっての遠いご先祖ですからね。知らないはずが無いでしょう。神ガラムドに命じられました。予言の勇者に加護を与えるよう……。しかし、あなたはもうエルフの加護を得ている。ならば、次に加護を得るのは……』

そうして。

その女性はルーシーを指さした。

「……僕?」

『そう。あなたです。そもそも、私はもともとアドバリー家に仕える身としてマリア様に召喚されました。ですが、私はガラムドに守護霊神として命じられて、この地に住まうこととなった。この町は守護霊使いの村と呼ばれていますからね……』

「守護霊使いの村……」

僕は女性の言葉を反芻する。

それにしても、守護霊の神――か。人々はこの神を信仰していた、ということになるのだろうか。

『それでは、あなたに加護を与えましょうか。ルーシー・アドバリー。あ、そうでした。先ず、私の名前をお伝えしないといけませんね。私の名前はライトといいます。守護霊の神、ライトです。同じ守護霊を量産することで、この場から離れることが出来ないという問題を解決します。そうして、今から、』

ライトは右手を掲げた。

同時に、ルーシーの身体に何かが入り込んだように見えた。

「いったい、何を……?」

『文字通りのことですよ、予言の勇者。私はただやるべきことをしただけ。今、何が入ってきたかは見えたでしょう? あれは守護霊ですよ。守護霊を彼の体内に入れたのです。私は先程、加護を与えるといいましたが……その前には一つ「試練」があるのですよ』

「……試練?」

『ええ……』

ライトはルーシーのほうを見つめて、冷淡な口調ではっきりと言い放った。

『――守護霊が体内に入っても、耐えうる身体であるかどうか、試すものです』

 

◇◇◇

 

僕の身体に、別の何かが入り込んでくる。

僕の心を、何かが破壊しようとしている。

「僕の身体を、乗っ取ろうとしているのか……!」

僕は、僕は、僕は――!

いいや、だめだ。

フルは予言の勇者としてエルフの加護を得ている。メアリーを助けるためには、僕だって強くならないと――。

「お願いだ。協力してくれ。守護霊」

僕は、そういって右手を差し出す。

自分を殺そうとしている相手に無防備に利き手を差し出す行為――はっきり言ってそれは自殺行為だということは解っている。けれど、僕はそれでも。

「強くなりたい」

その言葉が、自然に零れる。

一度その堰が壊れてしまえば、言葉はどんどん溢れてくる。

「僕は……何でも知っているメアリーや予言の勇者のフルと比べれば取り柄がない! だから強くなりたかった。誰かに守ってもらうんじゃなくて、自分自身を、味方を、みんなを、守ることのできる力が欲しかった!」

守護霊の攻撃が、僕の身体に当たる。

痛みは無い。その代わり、ぶつかった場所から煙のようなものが出てきて、僕の身体がそこを皮切りに消えようとしている。

「お願いだ。君は力を持っているのだろう? 僕は君を傷つけるつもりなんてない。僕はただ、みんなを守る力が欲しい! ただ、それだけだ!」

そして、僕の視界が光に包まれた――!

 

◇◇◇

 

「……ルーシー、大丈夫か……?」

僕たちは、ライトから言われたように彼女の前で待機していた。ほんとうはすぐにでも駆けつけたかったが、ライトからそれを抑止されてしまっては何も出来ない。ただ僕たちは、ルーシーの試練、その結果を待つしかなかった。

ルーシーは横たわったまま、動かない。

「ルーシー……大丈夫かしら……?」

レイナの言葉に、僕は頷く。

「きっと、ルーシーなら大丈夫な……はずだ」

ルーシーの左手がぴくりと動いたのは、ちょうどその時だった。

そしてルーシーはゆっくりと立ち上がった。

「ルーシー!」

僕は我慢出来なくなって、彼のもとへと向かい――彼を抱きしめた。

「良かった。ルーシーが無事で。もし失敗するようなことがあったら……、僕はメアリーに何といえばよかったか……!」

「心配をかけてしまったようだね」

ルーシーは僕から距離を置いて、僕を見つめる。

「けれど、何の心配もいらない。こうして、守護霊と解りあうことが出来た。さあ、急ごうじゃないか。メアリーを助けるために」

『どうやら、無事に試練を乗り越えたようですね』

ライトが僕とルーシーに語り掛けた。

それを聞いてルーシーは頷く。

『いい目をしていますね。それならば、彼女とともにこの村の人間も助けることが出来るでしょう』

「やはり、この村の人間も……」

ライトは頷くと、外へと僕たちを促した。

僕たちはそれに従って、外に出た。

「この村は守護霊使いが集まる村です。別に集まってきたわけではなくて、もともと守護霊使いがこの村を作ったからそういうことになったのですが、それは省きましょう。別に話す意味が無いからです。……それはさておき、あなたたちの探し物は、おそらくこの山の上にある神殿でしょう。そこに、いるはずですよ」

「神殿……。もしかして、そこにフィアノの人たちは!」

『ええ。何が理由でそうなっているのかは解りません。けれど、彼らがそこへ運ばれていったこともまた事実。ですから、もし可能なら……』

「許せない」

僕は、我慢できなかった。

何の罪のない人たちの命を、どうしてそんなに蹂躙出来る?

どうして罪のない人たちを、そう簡単に動かすことが出来る?

普通の精神で出来る話じゃない。

リュージュ。

祈祷師であり、スノーフォグの国王。

僕は彼女を、許せなかった。

 

 

「フル、待ってよ!」

ルーシーの言葉を聞いて、僕は我に返った。

どうやら僕はそのまま守護霊神の洞窟を抜け出し、神殿のある場所へと歩いていたようだった。

「君が怒る気持ちも解る。けれど、冷静にしていないとどうなるか解らないぞ。奇襲をかけられるかもしれない。それとも、バルト・イルファが面と向かって攻撃してくるかもしれない。いずれにせよ、僕たちが向かう場所は敵の本拠地だ。リーダーである君が冷静を欠いて、どうするつもりだい?」

それを聞いて、僕は少しだけ落ち着けようと、深呼吸した。

それを見たルーシーは笑みを浮かべて、

「落ち着いた?」

と優しく問いかけた。

僕は頷く。そして、改めてまた一歩神殿へと足を進めていった。

寂れた教会のような建物が僕たちの前に見えてきたのは、それから少ししてのことだった。

「……これなら神殿というよりも教会といったほうが正しいような気がするけれど」

独りごちり、扉をゆっくりと開ける。もちろん、警戒しながら。突然敵の攻撃が出てくることだって十分に考えられるわけだから、それに関しては慎重に物事を進めていかないと。

中は質素な教会で、長椅子が並べられている。しかし暫く人が入った様子が無かったのか、やはり寂れている様子が目立っている。

神父が居る机の後ろには梯子で降りることの出来る穴があった。

「……もしかして、何か隠されている?」

「まあ、ただの寂れた教会では無いだろうな。何かあることは確かだと思う」

そうして僕たちは教会の奥へと足を踏み入れていく。

 

 

梯子を降りた先には、廊下が伸びていた。壁には等間隔に蝋燭がつけられており、つい先程まで誰かが通ったような跡も見受けられる。

やはり、この場所には何か裏がある。

そんなことが解るような場所になっていた。

その廊下の続く先には、大きな聖堂があった。山の斜面にむき出しになっているのか、ステンドグラスから月光が入ってきている。

ステンドグラスには人々を導く神のような姿が描かれていた。正確には丘の上に立つ一人の少女が多数の民衆を導こうとしている、そんな様子だった。

そしてそんな厳かな雰囲気に似合わないものが動き回っていた。

のそり、のそり、と。

或いは息を吐きながら、もしくは涎を地面に撒き散らしながら。

メタモルフォーズがその姿を隠すことなく、ゆっくりと動き回っていた。

それも、一体だけではない。何十体といったメタモルフォーズが広い聖堂の中を動き回っていた。

「……なぜ、こんなにもメタモルフォーズが……?」

シュルツさんは顎に手を当てて、首を傾げつつ、言った。

「気になりますね……。しかも、人間を見ても何も反応を示さない。それどころか気にしていないようだ。近づいても威嚇すらしてこないし……」

「あっ、フル。もしかしてこいつら……、リーガル城を襲った奴じゃないか?」

リーガル城を襲った多数のメタモルフォーズ。実際には、首謀者を倒したことによってこちらに来ることはなかったのだが……、確かに翼が生えているところや四足歩行で歩いているところを見ると、その特徴は似ているかもしれない。

「もしかして、ここにメタモルフォーズを住まわせていたのかな。リーガル城にやってきたメタモルフォーズはここからやってきた、ってことになるよね」

「そうだね。元々の目的地はここかもしれない。けれど、今はメアリーが先。こいつらを掻い潜って、奥へ向かおう。どうやら聖堂の両側に扉があるようだし、もしかしたらそちらに居るかもしれない。フィアノの人たちが」

メタモルフォーズたちの真横を通って、僕たちは左側にある扉へと向かった。扉へ向かう際、何回かメタモルフォーズの身体に触れてしまったが、メタモルフォーズはそれを気にすることは無かった。

もしかしたら、彼らにとって僕たちは周囲を動き回る虫と同じ扱いなのかもしれない。それだったら殺すも生かすも自由だし。害を成す存在じゃないと解ってしまえば、放置することも十分に考えられる。

扉を開けると、その聖堂よりも何倍も豪華な神殿が広がっていた。装飾物も壁も床も――すべてが氷で作られたような場所だった。

「……まさか、地下にこんな神殿が隠れていたなんて……」

もともとあった場所なのか、リュージュのような人間が作ったのかは解らない。

けれど、その空間には聖堂や地上の教会と同じような神秘的な空間が広がっていた。

そして、その場所の中央。

そこには何人もの人が居た。

そしてその中の一人には――。

「メアリー!」

僕は、その少女の名前を言った。

ルーシーもほぼ同じタイミングで彼女の名前を口にした。

それを聞いて人々は僕たちのほうを向く。そして、メアリーはそれを見て僕たちのほうへと駆け出した。

「フル、ルーシー! まさかこのような場所まで来るなんて……!」

メアリーは感極まっていて、もう涙がでそうだった。

それにしても、ほんとうによかった。

出会えないと思っていたから。

「大丈夫、何か酷い目にあっていない?」

「ええ、大丈夫よ、レイナ。ありがとう」

「はじめまして、君がメアリーだね。僕の名前はシュルツ。彼らとともに旅をしている。よろしく頼むよ」

ああ、そういえば、シュルツさんとメアリーは初対面だったっけ。

そんなことを思いながら、僕はシュルツさんとメアリーの握手を目の前で見ていた。

「はじめまして、シュルツさん。私がメアリーです。よろしくお願いします」

丁寧に握手をしたのち、頭を下げる。

これで目的は達成。

しかしもう一つの、追加目的が残されている。

「あなたたちが、フィアノの人たちですか?」

僕はメアリーを除いた残りの人たちに語り掛けた。

反応は誰も同じ。頷いたり、ただ僕のほうを見つめたり。

「僕たちは、あなたたちを助けに来ました。急いで逃げましょう、この場所から!」

それを聞いて人々は安堵の表情を浮かべていた。

これで一件落着。追加目的も何とか達成できる――そう思った、ちょうどその時だった。

神殿の奥から、拍手が聞こえた。

反響音も相まって、とても大きく聞こえるが、それはたった一人の拍手だった。

「いやあ、よくここまで辿り着いたね、フル・ヤタクミ」

神殿の奥には、いつの間にやら一人の青年が立っていた。

それは僕たちもよく知る、あいつの姿だった。

「バルト・イルファ……!」

そう。

バルト・イルファが、憎たらしいような笑みを浮かべて、神殿の奥に立っていた。

「バルト・イルファ……!」

僕たちの先に必ずと言っていいほど現れる敵、バルト・イルファ。

彼はまた僕たちの前に立ち塞がり、何をしようとするのか。

「今日も月は、赤いね」

そんなことを思って、いつでも臨戦態勢にしていた僕たちだったが、バルト・イルファは想像の斜め上を行く言葉を口にした。

月が赤い、ってどういうことだ? 月は白く輝き、神聖なものの一つとも数えられているくらいじゃなかったか? まあ、その考えは僕が前居た世界の考え方であって、この世界の考え方とは少々違うのかもしれないけれど。

バルト・イルファの話は続く。

「もしかして、何も解らない? ステンドグラス越しにも見えるじゃないか。あの煌々と赤く輝いている月が」

ステンドグラス越し……。バルト・イルファがそう言ったので、僕たちもまたそちらの方を見た。

そこには、確かにバルト・イルファの言った通り赤い月があった。しかし、その赤い月だけではない。そのすぐ隣には僕が良く知るような白く輝く月も存在していた。

「この世界の人間は、昔からずっと二つの月があることを学んできていた。最初こそ、その月が二つある理由について知っていたかもしれないが、次第にそれを知る人間も少なくなってきた……。当然だ、リュージュ様が記憶を、長い時間をかけて操作していったからだ」

「……つまり、あの赤い月にはリュージュが隠しておきたい何かがある、ということか?」

「そういうことになるだろうねえ」

あっさりと、バルト・イルファはそれを認めた。てっきり焦らしてくるものかと思っていたのだが……。

バルト・イルファの話は続く。

「あの赤い月が何なのか、はっきり言って僕も知らない。知る意味が無いからね。知る必要も無いから、と言って過言でも無いだろう。世界にはまだまだ自分が知らないことや、知らなくていいことがたくさんある。そして君は……その一つを知ってしまった、ということだよ」

「このメタモルフォーズの巣が、知られざる事実だと? ならばなぜここへ導いた。お前がメアリーを誘拐しなければ、ここまでやってくることは無かったじゃないか」

「違うね。正確に言えば、これもまた事実の形としては正しいものだということだよ」

「……バルト・イルファ。そろそろ長ったらしい話をやめにしないか?」

声を聴いて、バルト・イルファは小さく舌打ちする。

まるでその声がやってくるのが、あまりタイミングの良くないように見えた。

バルト・イルファの背後には、気が付けば一人の少女が立っていた。臙脂色の制服みたいな恰好、同じ色のスカートに黒いタイツを履いている。

そして、驚いたのは。

「ルーシーに……そっくり?」

いや、そっくりって程じゃない。もっと言うなら、瓜二つ。双子か何かと言われてもおかしくない程度だった。

「ルチア……。どうして、ここに!!」

驚いていたのは、一番驚いていたのは、ルーシーだった。

当然かもしれないが、知識を持っていない僕たちにとってみれば、目の前に女装しているルーシーとただのルーシーが二人居るということになる。これは普通に考えてみればおかしい話だってことは直ぐに解る。

けれど、ルーシーはどうやらその存在を知っているようだった。

「あら、いやですねえ。どうやら覚えているようなんて。てっきり覚えていないものかと思っていたけれど、やっぱり案外記憶力だけはいいんだね?」

「黙れ。黙れ……、何でお前がここにいる、ルチア?」

「いいじゃないですか、別に私がどこにいようたって。それともあなたは縛るおつもりですか? 私を、この私を!」

「クラリス……いや、ルチアと呼べばいいのかな。今のこの現状では?」

バルト・イルファがルーシーとルチアの会話に入って、笑みを浮かべた。

対してルチアは溜息を吐いて、

「ほんとうにあなたは人が窮地に立つ場面が好きですね、バルト・イルファ。それはそれとして、私のことについて簡単に説明しておいたほうがいいかなあ、お兄ちゃん?」

「あれほどさんざん言っておいて、突然妹面かよ。さすがにそれはどうかと思うぞ、ルチア」

「妹……嘘だろ、ルーシー。お前、妹が居たのかよ」

「一人っ子だと思ったのか? まあ、言う機会が無かったからな。いろいろとあって、こんな感じになっていたわけだけれど……。まさかこんなところで再会するとは思いもしなかったよ、『三番目』」

「三番目?」

「……アドバリー家は六人の兄弟姉妹から構成されている。そして、その力はそれぞれ年功序列という形になっている。何と言えばいいかな? 力は強い順に並んでいる、といえばいいかな。僕は二番目、だから二番目と呼ばれている。兄とか名前とか、そんなチャチなものでは呼ばれない。残念なことかもしれないだろう? けれど、アドバリー家ではそれが普通でそれが日常だ」

「長ったらしいことを話す必要があるのかしら? ……まあ、それはいいけれど。とにかく、まさかこのようなところで『二番目』に出会えるとは思いもしなかった。それに、予言の勇者側についているとは。血は争えないのでしょうか。戦う能力を持った、世界最強の家族とも揶揄されたアドバリー家の血は」